ドナルド・バード、1969年発表作。ジャケットのイメージそのまま、生々しさが希薄で浮遊感溢れるサウンドを聴かせてくれます。
エレピを弾いているデューク・ピアソンがプロデューサーも兼ねているのだけれど、アルバム全体の印象を決定付けているのも彼の演奏のようだ。
収録曲ではなんといっても冒頭のタイトル曲 "Fancy Free" が抜群。なんだろう、このエレピのコードの響きは。テーマ部分ではフルートによるメロディも良いのだけれど、このエレピに管が重なったハーモニーが豊かで、凄く気持ちがいい。曲の間じゅう、ずっと鳴り続ける早いパッセージのパーカッションも効いている。ここまでサウンド構築がなされていれば、ソロなんていらないのではないか。ひたすら浸っていたい12分だ。
続く "I Love the Girl" はリリカルなメロディが染み入る優美なスロウ。唄ごころを感じさせるソロも良いですが、しっかりとアレンジされたエンディングが実に端整。
アナログではB面にあたる後半2曲はソウルジャズといってよいものであるけれど、普通ならオルガンでやりそうな演奏をエレピで押し通しているせいか、どこかアク抜きされたようなレイドバックした空気に支配されています。
古い皮袋に新しい酒を入れたようなところはあるのでしょうが、個人的にはジャズらしい骨格を残したところに頼もしさを感じる一枚。
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