寝室で自殺しているのを発見された男には、そうする動機がない上、現場には不可解な状況が。ただし、彼を殺害する動機もまた見当たらなかったため、警察は自殺と判断。歴史教師キャラロラス・ディーンは独自に捜査を続けるが、やがてさらなる事件が。
1956年発表作。ディーン初登場の
『死の扉』は二年前に東京創元社から新訳が出されて話題になりましたが、この『ミンコット荘に死す』はシリーズ3作目です。装丁はこれもレトロ風味なもので、(出版社が異なるにもかかわらず)『死の扉』と同じデザイナーが手がけたそう。
非常にオーソドックスな探偵小説らしく物語は進んでいきます。証拠は見つからないが機会はだれにでもありそう。そんな煮え切らない状態が続き、中盤くらいまでは結構地味(もっとも、最後まで読めばこれは必然であることがわかるのですが)。ディーンの教え子であるプリグリー君の活躍場面が少ないのも物足りないな。
フーダニットとしては既存のアイディアを一捻りしたものであって、これだけでも結構面白いのだけれど、本作の肝は意外な動機。そして、それが判明するのは、まさしく終盤に犯人の計画が完遂された時点である。取り立てて特徴の無いようにみえた物語に、この作者らしい捻くれた趣向が隠されていて、これはお見事。
ただ、謎解きそのものは分量はあるけれど、わりに大雑把。黄金期の作風を踏襲しているようでありながら、読みどころはプロットということになるでしょうか。
期待の仕方を間違えなければ、楽しんで読めるミステリだと思いますよ。
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