2014-10-13

アガサ・クリスティー「予告殺人」


「殺人お知らせ申しあげます。十月二十九日金曜日、午後六時三十分より、リトル・パドックスにて、お知り合いの方のお越しをお待ちします。右ご通知まで」
週刊紙《ギャゼット》の個人広告欄に載せられたそれは、一風変わった招待状のように思われた。近隣に住む人々たちは興味を引かれて集まって来たのだが。

1950年発表、ジェーン・マープルもの長編。これは有名作品ですね。僕も大昔に一度読んでいるはず。
魅力的な導入から意外な事件の発生までが非常にテンポがいい。マープルも割りに早い段階で登場。しょっぱなからちょっとした洞察で名探偵ぶりを見せてくれます。ただし、そこからははいつもとあまり変わらない。誰もに犯罪の機会があったが、手がかりらしいものはない、というお話。

実は犯人の見当は付きやすい。というか、クリスティはこのパターンを何度も使っているのでね、長編だけでも40冊も読んでくればさすがに。とても細かいミスリードがあるので、注意深く読めば逆に引っかかるかもしれませんが。
ただし、隠されていた物語は予想外なもの。考えてみればこれもお馴染みのパターンなんですけど、散々前振りをしたあげくにまだ使うか、という質の驚きがあります。
一方で、マープルの推理はいつもの人間観察よりも、むしろ状況証拠から組み立てていくもので読み応えがあります。伏線もお見事で、セントラル・ヒーティングの扱いなんかもう、唸っちゃう。

読み終えてみれば、とてもオーソドックスなスタイルで組み立てられたフーダニットでありました。古典的な謎解きが好きなひとには合うんじゃないかしら。

2 件のコメント:

  1. こんにちは。
    「予告殺人」は好きな作品です。
    初読時はすっかりだまされ、ただ感心した覚えがあります(素直な私)。
    クリスティ中期の傑作ですね。

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    1. それまで使ってきたトリックに磨きをかけた、という感じの作品ですね。
      1950年のものにしては中盤の展開が単調なのですが、それが逆にいかにもクラシック、という印象に結びついているのかもしれません。

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