2014-11-04

有栖川有栖「怪しい店」


作家アリスものの新刊は、さまざまな店をテーマにした五作品を収めた短編集。すべてが今年発表された作品なので、短編集だけれど本当に最新という感じ。
装丁がいいですね。背表紙や見返しにも薄く模様があって、細やかさが感じられる仕事です。


「古物の魔」 骨董店を舞台にしたフーダニット。90ページほどあって、これが一番長い。
事件そのものは地味で、いかにも取っ掛かりがないように見えるのだが、不可解な点を洗い出し、そこから意外な動機を浮かび上がらせる手際はいつもながら巧い。誤導や伏線も実に大胆だ。

「燈火堂の奇禍」 古書店の主人が頭を打って意識不明になったのだが、実際には何が起こっていたのか。些細な手掛かりから想像を広げていく小品。古書店というシチュエーションが絶妙ですな。

「ショーウィンドウを砕く」 倒叙もの。あえて策を弄さずに行われた犯罪だが、意表をついた手掛かりと、細かな伏線が綺麗に収まっていく解決がお見事。

「潮騒理髪店」 いい題名だ。題名が良い小説は中身も良いに決まっている。旅先で火村准教授が出会った謎と、ありえたかもしれない解答。
光景の持つ意味、その変化が鮮やかなのだけれど、あえて読者が先に気付けるように書かれているのも、小説としてのかたちの良さを優先させたからでは。

「怪しい店」 他人の悩みを聞く「聴き屋」、その女主人が殺される。これは80ページ近くあって、捜査が進むうちに被害者の人間性が見えてくる過程が読ませる。
謎解きのほうは、小さな矛盾からある前提をひっくり返すというもので、実に正統派なロジックが楽しめます。


昨年に出た同シリーズの『菩提樹荘の殺人』が全体的に緩いような気がしたので、読む前はどうだろうかと思っていたのだけれど。今回は無駄なところが少なく、締まった仕上がりの作品が揃っています。「店」というテーマを設けながら、ミステリとしてのバラエティも感じられるのも良いですな。
派手な趣向こそありませんが、丁寧でしっかりと作られた短編集でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿