2014-11-30

ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ「赤い右手」


際物だと思っていたので今まで読まずにきた作品ですが、文庫化ということで手を出してみました。1945年の作品ということですね。エラリー・クイーンだと『フォックス家の殺人』の時代だ。

中心となるのは異様な外見を持つヒッチハイカーによる強盗殺人である。
事件についてはある登場人物の一人称により、何度も時系列を行ったり来たりしながら断片的に語られていくのだが、その語りが何かしらおかしい。信頼できない語り手であるというだけではなく、明らかに神の視点が混じっている。また、思わせぶりな描写が凄く多くて、そのどれもが伏線に見えてしまい、いちいち引っかかる。
一体どういう風に決着はつくのか、見当がつかないまま、熱を感じさせる文章によってぐいぐい読まされていきます。

ミステリとしては相当無茶なつくりだ。充分に手掛かりが用意されているとはいえ、それを作品全体を覆う混沌とした雰囲気が隠してしまっている。
あと、誤導がえげつないな。いくらなんでもそれはないだろう、というような。

うん、なんていうか、すれっからしの読者向けでしょうね。
懐かしの新本格みたいで面白かった、それも抜群に。

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