2015-03-22

フィリップ・K・ディック「ザップ・ガン」


1967年発表作で、実際にはその三年前に書かれていたそう。
これも再読だ。そんなことばかりしていていいのか、と思わなくもないのだが。内容を覚えていないのだから、いいのだ、きっと。

時は2004年、地球は軍事的にふたつの勢力に分かれていた。アメリカに代表される西側とロシアを中心とした東側に。
西側に所属する兵器デザイナー、ラーズ・パウダードライはトランス状態になることで新しい兵器のアイディアを生み出していた。東側にも同じ役割を果たす人物がいて、両陣営は日夜、新たな殺傷兵器を開発することでしのぎを削り、対抗勢力を上回ろうとしていた。
と、人々は信じていたのだが・・・・・・。

ディックの作品ではよく、自分たちの生きている世界がまやかしではないか、というテーマが現れるが、この「ザップ・ガン」では幻想を維持している側の人間が中心となって描かれている。主人公であるラーズ・パウダードライは人々を偽っていることに対して、大きなプレッシャーを感じているのだ。だが、ラーズが自分から参ってしまう前に、本物の脅威が出現する。

元々が気楽に読み飛ばせる娯楽SFを一丁、という要請に合わせて書かれた作品らしいのだが、そこは脂の乗っている時期のディック、奇妙なガジェットが盛り込まれ、特に後半部分に入ると全く予想だにしなかった唐突な展開が次から次へと待っている。ちょっと前に「聖なる侵入」なんて読んだせいもあるが、いやあ面白いねえ。

思いつきをそのまま放り込んだような要素が見受けられ、なぜそうなったのか? という説明がまるですっこ抜けている。また、奇妙な結末はそれまでの流れとはそぐわないというか、取ってつけたような感もある。
それでもディックでしかありえない味が堪能できるし、読んでいる間は楽しいB級SFでありました。

0 件のコメント:

コメントを投稿