2015-06-03

エドワード・D・ホック「怪盗ニック全仕事1」


エドワード・D・ホックのニック・ヴェルヴェットものは、大昔にポケミスで2冊くらい読んでいる(はず)。
本書にはそのシリーズ短編87作のうち最初の15作が発表順に収められています。すべて新訳もしくは改訳とのこと。

ニックは依頼を受けて価値のないものを盗む泥棒であって、その獲物はプールいっぱいの水、すでに公演が終わったショウの切符、大リーグの野球チームをまるごと、湖に住まう大海蛇、などなど。一作ごとに趣向を変えた奇妙な依頼と、それを盗み出す知恵が楽しい。
一方で、依頼者が事前に盗む理由を教えてくれることがあまりなく、気付かないうちに別の犯罪の道具として利用されることも多い。そのためニックは、あの手この手で依頼に応えつつ、同時に隠された盗みの動機について頭をひねることになる。一作のうちで泥棒と探偵役の両方を務めるわけだ。

物語の大枠だけ取ると良く似た展開のものが多いので、続けて読むには向かないのだけれど、ひとつひとつはアイディアと意外性に富んだ作品ばかり。作品によっては詰め込みすぎに感じるものすらあります。
個人的に気に入ったのはニックの怪盗ぶり・名探偵ぶりともに格好いい「おもちゃのネズミを盗め」、謎解き小説としての要素が非常に強い「邪悪な劇場切符を盗め」、単純な手掛かりをうまく隠した「陪審団を盗め」あたり。クライム・ストーリー的な切れを残す「聖なる音楽を盗め」、意外なプロットで先を読ませない「七羽の大鴉を盗め」も手が込んでいる上に少しテイストが変わっていて、面白い。

特にユーモラスな描写や表現がなくとも自然と顔がほころんでくるのは、遊び心に満ちているからだろうな。気楽に読めるのもいいですね。

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