2015-09-20

エラリー・クイーン「チェスプレイヤーの密室」


エラリー・クイーンのペーパーバック・オリジナルというのは、要は他人が書いた作品をクイーン名義で出したもので、これまではあまり関心が無かった。『恐怖の研究』にはフレデリック・ダネイが参加しているというけれど、あれも詰まらなかったもの。

そんなペーパーバック・オリジナルで未訳の26作品より内容の優れた3作がセレクトされ、〈エラリー・クイーン外典コレクション〉と銘打って出されることとなりました。監修はおなじみ飯城勇三氏。
『チェスプレイヤーの密室』はその第一弾で代作者はジャック・ヴァンス。1965年発表作であり、密室殺人が扱われています。クイーンで密室というとあれやこれや思い浮かびますな。本作品のものにはああいった捻った趣向はないけれど、その分、実に強固な謎が設定されています。

解説によれば、代作者を使ったペーパーバック・オリジナルのそもそものコンセプトが、それまでのクイーンとは違った傾向の作品を出して読者層を広げる、というものであったということです。
その一方で実作の執筆は、梗概の段階でマンフレッド・リーがチェックを入れては代作者に何度も書き直しを命じ、最終的に小説の形になった文章にもリーが徹底的に手を入れる、といったものだったらしい。
実際に読んでみると、確かにオーソドックスな謎解き小説なものの、作風というか展開からはクイーンぽさはあまり感じられない。あえて挙げるなら登場人物一覧がそれらしいか。

ミステリとしてはフェアプレイに配慮して、しっかり組み立てられたもので。密室トリックについては時代を考えればオリジナリティも主張できそうだし、手掛かりも面白い。プロットにも意外性があって、よく練られていると思います。
そういったように楽しめる作品なのですが、エラリー・クイーンのテイストを求める読書には向いていないですね。値段も安い本ではないし、うーん。

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