2015-10-19

Ricci Martin / Beached


1960年代のアメリカに、三人組のポップグループでディノ・デシ&ビリーというのがいました。メンバーのうちビリー・ヒンチは'70年代以降、ビーチ・ボーイズとともに活動していきます。一方、ディノ・マーティンはシナトラ・ファミリーであるディーン・マーティンの息子でした。
そして、そのディノの弟、リッキー・マーティンが1977年にリリースした唯一のアルバムが「Beached」です。米Real Gone Musicからのリイシューはヴィク・アネシーニによるマスタリングで、ボーナス・トラックとしてステレオ・シングル・ヴァージョン2曲に、同曲のプロモ用モノラル・ヴァージョンが追加されております。

レコード制作はリッキーの自作曲を耳にしたカール・ウィルソンがもちかけたそうで、プロデュースはカールとビリー・ヒンチが担当。レコーディングは1975年から'77年にかけてビーチ・ボーイズ所有のブラザー・スタジオで行われました。ビーチ・ボーイズからはカールの他にデニス・ウィルソンが、またシカゴのメンバーやヴァン・ダイク・パークス、ジミー・マカロックらも演奏に参加しています。
収録曲は全てリッキーのオリジナルで、これが意外なほどメロディのいいものが揃っています。サウンドの方は'70年代中期のビーチ・ボーイズを軽やかでメロウにした感じといったらよいか。ストリングスを配したスロウでは同時期に制作されていたデニスのソロ・アルバムを思わせるところも。

リッキーのボーカルは正直、線が細いものであって、カール・ウィルソンのような美声でもなければ、デニスのような深みもない。けれど、その頼りなげな歌声が当時のビーチ・ボーイズと共通するような成熟したサウンドに乗っかることで、儚さや脆さをロマンティックに表現した作品になっていると思います。
カリフォルニア・ポップの中でシンガー・ソングライター的なテイストが生きている、いいアルバムです。

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