2016-10-10

ジョン・ディクスン・カー「緑のカプセルの謎」


ある村の菓子店でチョコレートに毒が混入され、死者が出るという事件が発生。犯人の疑いをかけられた人物が住む屋敷、その家長がある実験をするといいだした。人間の観察力などあてにならないことを示すものであり、また毒殺事件の手掛かりとなるものだと。だが、その実演の場で更なる事件が起きてしまう。そして、それを見ていたはずの人々の証言はことごとく食い違っていたのだ。


1939年のギデオン・フェル博士もの、新訳です。これも昔読んでいて、おおまかな設定だけは覚えていました。
事件のほうは殺人劇中に本当の殺人が起きる、というミステリファンならお馴染みのもので、カーが得意とするオカルト風の味付けはありませんが、容疑者たちが皆、そばにいて犯行シーンを目撃していた、という不可能興味が強烈です。
語り手であるスコットランド・ヤードの警部は地元の警官とその上司たちとそれぞれの持論をぶつけあいますが、肝心の犯行方法についてはわからないまま。やがてフェル博士が登場し、その一端が明らかにされますが。

真相のほうは一捻りではすまない趣向が凝らされています。被害者自身の意図に犯人の計略が絡まった複雑なものである上、特にある仕掛けは、一つの大きな謎が解けることで実は別の罠にかかってしまう、という非常に手の込んだもの。叙述トリックの構造を違う次元に移し変えた、ということすら言えるのではないかしら。

プロットを面白くしようとするあまり、純粋に謎解きとして考えれば無駄に思えるところもありますが、ダブル・ミーニングなどのアイディアも満載、とても考え抜かれたミステリだと思います。

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