2016-10-02

平石貴樹「松谷警部と向島の血」


2012年の夏、両国国技館近くにあるワンルームマンションの一室で若手力士の刺殺体が発見され、そばには「コノ者、相撲道ニ悖ル」と印刷された紙が。しかし、当時の相撲界や被害者自身の状況から不祥事があったとは考えにくかった。これといった有力な線がなく捜査が膠着しているうち、更なる事件が起こる。


女性警官、白石イアイが謎解き役を務める第4作。上司である松谷警部が定年退職を間近に控えており、どうやらシリーズ最終作となりそう。そのせいか、今までの事件についての言及もちらほら見られます。また、物語の展開もやや派手目です。

殺人事件が次々と起こるにつれて、さまざまな容疑者が浮上。しかし、それらのすべてにおいて機会があった人物はいない。被害者が力士ばかりとなると、犯行の困難度が上がってしまうのだ。
そうこうするうちに松谷警部に残された日もわずかになっていくが、まったく意外なタイミングで白石巡査部長は真相にたどり着く。

その解決編では、ある奇妙な状況に関するねちっこいロジックがエラリー・クイーン的で実に楽しい。そして、そこから一気に全体像が明らかにされていく展開も、細かな伏線が浮かび上がってくるもので鮮やかです。読者にとっては全てを推理できるようにはなっていませんが、こうでしかないだろう、という。ひとつひとつの殺害方法が異なっているのにも納得。

普通に面白いオーソドックスなフーダニット。こういうのをもっと読みたいものだが。

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