2017-10-19

ジャック・カーリイ「キリング・ゲーム」


ふたりとも殺してやる。グレゴリーは掃除用具を蹴飛ばし、便で汚れた水で手を濡らしたまま、暑くて悪臭の漂うガレージを歩きまわった。あいつらの目玉をくり抜く。腹を切り裂き、飢えたドブネズミを詰める……タマを木に釘づけしてから、頚動脈を剪定バサミで切る……

二年に一度邦訳が出るカーソン・ライダー刑事シリーズ、これはその9作目で、米本国では2013年に出版された作品です。我が国では6作目と8作目がスキップされていまして、この作品ではそのうちの一つの殺人犯についても触れられているのですが、これは大丈夫なやつなのかしら。
ただ、出てくるのが毎度サイコパスのシリアルキラーなわけで、その辺りを考えると、うん、隔年でいいかな、という気がしないでもない。

今作では犯人が物語の最初から名前付きで登場している。そして、被害者たち個人の間には本当に関連がない。つまり、読者にとっては解くべき謎が存在しないし、次の被害者の予想も立てられないためサスペンスが生まれない。こうなってくるとなかなか、読み進めるのが大変。後半に入ると主人公の兄にしてサイコパスのエキスパート、ジェレミーも登場するけれど、役不足な感が否めない。この程度のことでジェレミーを呼ぶなよ、と思ってしまう。
犯人の自制にほころびが見え始めたときに、ようやく物語のエンジンが掛かってくる、そんな感じなのだ。

結末近くに至り、全てが明らかになったとき、それらの欠点は必然であったことがわかる。全てに意味があったのか、と。その意外性が発動するのが予想外の領域にあるため、かえってカタルシスに直結しないのは痛し痒し。

いわゆる伏線とは違う、クリスティ的な騙し絵の技巧が駆使された力作ではあります。ただ、ミステリとしての達成に感心はするけれど、エンターテイメントとして面白いかといわれると、どうかしら。
あと、シリーズはこの後からちょっと変わっていくようでありますね。

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