なんてことだ、まったく。既にミステリというよりは、これは小説化されたなぞなぞではないのか。
同じ作者による『四神金赤館銀青館不可能殺人』や『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』に連なる作品であります。これまでも地理的に隔絶された二つの館を瞬間移動する殺人者、というトリックで読者を呆れさせてきたが、今回の『新世界崩壊』ではニューヨークからサンフランシスコ、あるいはロンドンへと瞬時に移動して殺人が行われる。それも密室というおまけつきで。
常識に照らしてあからさまにおかしく、怪しい状況が何度も描写されており、はっきりとしたヒントも出されているため、『四神~』や『三崎~』を読んでいればそのパターンに思い当たり、舞台設定の仕掛けにある程度は察しも付く。
しかし、その思い至らなかったところが今回も凄い。世界が細部にいたるまでしっかりと構築された馬鹿馬鹿しさ。サブトリックに何気に大ネタが放り込まれているのも見逃せない。そして、これらをちゃんと成立させていのはまぎれもない筆力だ。
『新世界』が崩壊するシーンのカタルシスの無さが素晴らしい。
バラバラに切断された死体と極上のステーキを出すレストラン、という見えみえな組み合わせも楽しいし、お約束なドタバタもむしろ不可欠なものに思える。
衝撃力では前2作に譲るものの、完成度や造り込みは職人的な一冊、でありました。
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