2011-04-10

アガサ・クリスティー「ビッグ4」


1927年作。ミステリ史に残る野心作『アクロイド殺し』でベストセラー作家になったクリスティですが、その翌年に刊行されたのがこれ。当時の読者には、次はどんな手で来るのか、という期待があったのでは。
しかし・・・。

語り手は再びヘイステイングズ大尉に戻り、ポアロとのおなじみコンビが復活。全世界の支配をもくろむ犯罪組織「ビッグ4」を相手に、生死を賭けた闘いが繰り広げられる、という国際謀略、冒険路線であります。
とにかくビッグ4の設定がスケール大きすぎて、はなからリアリティは皆無。そのくせ殺人は常にナンバー4と呼ばれる変装の名人が手を下しているようで、なんだかちぐはぐ。話はやたらにでかいのに実際の行動の方はせこい感があり、構想にちゃんと肉付けができていないのは明らか。

物語の構成としては、独立した事件をいくつも数珠繋ぎにしたものであり、連作短編集としても読めましょうか。ただ、それぞれのエピソードにはちょっとしたアイディアが盛られているのだけど、長編として見ると軽すぎるし、流れが単調なのは否めない。次々に事件が起こり、人が殺され、後一歩のところで犯人を取り逃がす、それらの繰り返し。展開がスピーディで、読み易くはあるけども。
また、ポアロも慎重なんだか軽率なんだか。言ってる事はコロコロ変わるし、やけに行動的でちょっと、らしくない。

終盤になってようやく盛り上がってきますが、仕掛けが見え易いのはいかんとも。
あと、結末のつけ方は強引すぎ。ジェイムズ・ボンドなら良かったかも。

小説として、設計ミスだという気がするなあ。
まあ、こういう試行錯誤を経て、クリスティは作家としてのスタイルを固めていったのでしょうな。

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