ギルバート・オサリヴァンのリイシューが英Salvoで進められているのだけれど、この「Himself」は1971年のデビュー・アルバム。
下世話過ぎず、かと言って私小説的でもない。端整なポップソングが1ダース+。
シングルヒットした "Nothing Rhymed" は流石の出来栄えだけど、その他も良く練り込まれた曲ばかりだ。
マッカートニー的でありつつ、もっと古いところにルーツがあるような親しみ易いメロディには、意外な展開を秘められているが、それが決してわざとらしくはならないのが素晴らしい。
一方、淡々としていながらも癖のあるボーカルからは、強固なキャラクターが伺われるようである。そう考えながら聴くと、ユーモラスでちょっとセンチメンタルな中にも、ニルソンあるいはレイ・デイヴィスを思わせる皮肉っぽさも漂っているよう。
また、殆どの曲がピアノ・オリエンテッドでミディアムテンポなのに、アルバム全体としてはヴァラエティを感じさせる多彩なアレンジも見逃せない。
オールドタイミーなものからバロック・ポップ、ジャジーなものやビートルズを思わせる展開の曲まで。落ち着いていながら、カラフルでもあって、その節度がいかにも英国的であり。
新しくはないかもしれないが古びることも無い、そんな個性と瑞々しさが共存する。
デビュー盤でしかありえないきらめきが詰まった一枚。
今回のリイシューでは、ボーナストラックは勿論、ブックレットには本人による全曲解説や歌詞も掲載されているのが嬉しいところです。
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