2012-09-01

Elvis Costello and The Attractions / Goodbye Cruel World


1984年、エルヴィス・コステロがモダンなソウルミュージックに近いスタイルを試みたアルバム。プロデュースは前作「Punch The Clock」に続いて、クライヴ・ランジャー&アラン・ウィンスタンリー。

コステロ自身は昔からずっと、このアルバムのコマーシャルなサウンドについて良いことは言っていないが、僕の個人的な好みとしてはそれほど悪くないと思う。本人がどう思っているかは別として、少なくともコステロにはもっと他に引きの弱い作品があるだろう。
確かに派手なシンセの多用が時代を感じさせる瞬間もあるんだけれど、逆にあまり大した起伏のない曲でも単調さに陥らずに聴けるものになっている面もあって、流石にマッドネスのプロデューサーは違うな、と。

実際、このアルバムの曲のシンプルなデモや弾き語りヴァージョンを聴いてもそんなに面白くない。エルヴィス・コステロというひとはもしかしたら歌はうまいのかもしれないけれど、いかにも不十分だ。プロダクションの工夫が足りないものでも聴かせられるのは、天性の魅力的な声を持つようなほんの一握りのシンガーのみだろうと思うのだが。
オープナーの "The Only Flame In Town" なんかは、ライヴだとスロウにして思い入れたっぷりに唄っちゃったりされますが、スタジオヴァージョンでの弾むようなリズムに乗ってこそポップソングとして成立しているんじゃないかな。

メロウな佳曲が多いけれど、サウンドとの親和が一番いいのはカバーの "I Wanna Be Loved"。コード感を強調することで、ティーチャーズ・エディションのオリジナルよりもずっとフックが効いたものになっている。やっぱりベースはブルース・トーマスがいいね。

時代の音としっかり向き合うことで、エルヴィス・コステロのアルバムの中でも特に親しみ易いものとなっている作品では。

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