2012-09-11

倉阪鬼一郎「不可能楽園〈蒼色館〉」


倉阪鬼一郎による年に一度、恒例のバカミス。
今回は鉄壁のアリバイ+誘拐劇+衆人監視下の消失、といったところであって、例によって凄いっちゃあ凄い密度です。

アリバイトリックは複合技を使っているせいか、例年に比べると破壊力がおとなしめではありますが、脱力感は充分。
また、それに絡めてある錯誤が仕掛けられていて。読んでいても違和感というより、明らかにおかしいだろうというレベルのものなんですが、真相の馬鹿馬鹿しさはこちらも負けず、なおかつ古き良き新本格テイストも感じられる絶妙の効き方をしています。
勿論、丁寧に張り巡らされた伏線は笑いを誘わずにはおきません。

事件の謎が解かれてから以降、終盤の怒涛の展開は、まあ、毎回似たようなものなんですけれど。予想だにしないが特に驚きもない、という。ただ、今作ではその部分がややあっさり目であって、その分、小説としてのまとまりが良いように思います。
いや、むしろこの綺麗な閉じ方に、ある種のミステリの終着点を感じる、なんて言い過ぎかしら。

そうだ、帯の文章は先に読まない方がいいかも。

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