2013-06-30

エリック・キース「ムーンズエンド荘の殺人」


出演者はそろい、舞台も整った。 "ナインマンズ・マーダー" ゲームへようこそ。

15年前に探偵学校で学んだものたちの元に、校長の別荘で開かれる同窓会の招待状が届いた。卒業生たちには勿論、職業探偵もいれば地方検事局で働くもの、作家や司祭、逆に犯罪に手を染めるようになったものまで。彼らは単に旧交を温めるだけが目的でなく、それぞれに隠れた思惑をもって同窓会に集まってきた。だが、主催者であるはずの校長の姿が見えない。やがて雪が降り始め・・・。

帯には「雪の山荘版『そして誰もいなくなった』!」の文字。米国作家による2011年発表のデビュー作です。
大まかな流れとしてクリスティの作品を踏まえつつ、それと平行して過去に登場人物たち全員が関わったが未解決に終わった事件の謎についてのディスカッションも行なわれる。
身近に連続殺人が起こっているにしては皆、随分と冷静であって。強烈なサスペンスは感じられず、オーソドックスなフーダニットを読んでいる雰囲気。

新人作家らしく意欲的に色々と詰め込まれているんだけど、そのせいで話の流れが悪くなっている上、ミステリとしてはちょっと手堅すぎるかな。手掛かりをちゃんと拾っていけば犯人の見当はついてしまうし、誤導も素直すぎて読み慣れたひとなら引っ掛からないだろう。『そして誰もいなくなった』をやるのなら、批判覚悟で少々汚い手を使うくらいでないと。
一方で、こってり盛られた解決編はなかなかのもの。結構な量のある細かな疑問や違和感が綺麗に収束されていく快感がたまらない。密室トリックはしょぼいものですが、それを補って余りある読み応えを感じました。

クラシックな探偵小説を志向してバランスを取り損ねたような作品ですが、何かやってやろう、仕掛けてやろう、というような稚気が感じられて個人的には充分愉しめました。

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