2014-06-29

泡坂妻夫「11枚のとらんぷ」


泡坂妻夫の第一長編、まさに奇術づくし。角川文庫からの出し直しです。

全体が三部構成になっていて、第一部は地方の公民館が舞台。奇術サークルの発表会、そのステージが行われている時間に殺人事件が起こる。事件現場にはその奇術サークルにかかわりの深い短編集「11枚のとらんぷ」に基づいた見立てが。
第二部には、その「11枚のとらんぷ」が作中作として置かれています。奇術を扱った短編集であり、ひとつひとつが洒落た出来栄えです。
第三部は世界中からマジシャンが集まる国際奇術家会議、それが東京で行われているという設定。伝説的な人物にも言及され(ダイ・ヴァーノンとフレッド・カップスが同席、なんて)、華やかさもいや増す。
終盤に至り、謎解きへ。事件には関係の無いように見えたエピソードひとつひとつが生きてくる。

この作品は大昔に一度読んだきりで、そのときには良さがちゃんとわからなかった。泡坂妻夫の作風では、ルーティンから外れた場所に意外性が配置されていることが多いのですな。話の展開もオフビート。だから、古典的なミステリ観でがちがちの野暮天には肩透かしだったり、物足りなく感じたりしたわけ。
この長編も凄く力のこもった部分と、逆にずいぶんあっさり流すところがあります。

カラフルでユーモラス、とにかく凝りに凝りまくった一作。バランスとかリアリティなんてうっちゃって、この世界で遊べばいいと思うよ。

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