エイリアンによる地球侵略もの。ディック単独作ではなくレイ・ネルスンというひとの共作ですが、そこは気にしないでいいです。
ガニメデ軍に無条件降伏を迫られた地球には、とっておきの武器が残されていた。それは強力な幻覚を発生する装置なのだが、それを行使した地球人も影響を受けてしまうというものであり、まだ動作テストもしていないという厄介なシロモノ。
侵略者たちに抵抗する黒人勢力のカリスマ的リーダー、パーシィXを中心にして、レイシストである有力者や精神医学者などが絡んでくるのだが、敵か味方かがわからないキャラクターたちであって、スリリングな雰囲気が醸成されていきます。
SFらしいアイディアとして未来世界風のガジェットやテレパシー、人間を無の境地にいざなう実験などがぶちこまれていて、まあ、退屈することはないんだけれど、逆に「ここのところをもっと掘り下げていけばなあ」と思うこともしばしば。また、シリアスな展開の中で馬鹿馬鹿しいユーモアもあって、そこら辺りが共作たるところでしょうか。
作品の中盤に至り、現実崩壊やシミュラクラなど、おなじみのテーマが顔を出し始めるものの、それらの扱いは結構あっさり。逆にこのあたりから展開がすごくいい加減なものになってきます。「ええーっ、そんなのでいいの?」の連続です。
思わせぶりなエンディングはディックらしいと言えなくもないが、安い感じもするかなあ。
まあ、「必読」の「傑作」とやらを求めるひとには勧めませんが、B級SFとしてはそこそこ読める出来だと思いますよ。
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