2015-04-08

アガサ・クリスティー「ポケットにライ麦を」


社長であるフォテスキュー氏は秘書が入れた朝のお茶を飲んだ直後に苦しみ出す。病院に搬送されたものの、暫くして息を引き取った。死因は毒殺。さらに死体のポケットには何故か、たくさんのライ麦の粒が入れられていることがわかった。捜査に当たることになったニール警部は被害者の家族ひとりひとりに疑いの目を向けていたが、その矢先にさらなる事件が。


1953年発表、ジェーン・マープルもの長編。
「6ペンスの唄」というマザー・グースをモチーフにした事件が描かれています。

連続殺人なのですが、被害者たちと同居している人々の誰もが機会と動機をもっているようであって、なかなか犯人の目鼻がついてこない。
それでも、マープルが登場して見立て殺人であることを指摘すると、さらにそこから発展して過去の因縁も浮かび上がってきます。また、故人の残した遺言状に付帯条件というのがあって、これが出てくることで状況にちょっとしたひねりが。
事件の持つ奥行きが見えてくることで、どんどんと引き込まれていくわけで。はっきりした手掛かりが浮かんでこなくても、読んでいて愉しい。

謎解きの方はは起伏をはらんでいる上に意外性も備えていて面白い。ですが、ちょっと肩透かしな感も受けました。犯人の計画はいかにも適当過ぎるし、異様な道具立てもあまり生かされていない。

雰囲気やきびきびとした展開は良かったのだけれど、ミステリとしては緊密さに欠けると思います。
本作品はむしろ「ミス・マープル自身の事件」としての側面が強いのかな。

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