2015-04-18

ドナルド・E・ウエストレイク「ホット・ロック」


凄腕の盗賊ドートマンダー、晴れて刑期を務め上げたものの手元には十ドルしかない。そこに古馴染みの仲間から大仕事の誘いがあった。ドートマンダーは計画を練り上げると何人かのエキスパートを集め、展示されているエメラルドの盗みに入ったのだが。


1970年発表、大人向けの御伽噺といってしまいたい、ユーモラスなクライム・フィクション。

ドートマンダーは見た目はぱっとしない中年男だが、難しい障壁をクリアする犯罪計画を立てることにかけてはまぎれもないプロフェッショナル。ところが実際にその計画は成功するものの、エメラルドは手に入らない。詰めが甘いのか単に不運なせいか、何度も何度も状況を変えては、その都度危ない橋を渡る羽目になる。

当然、その盗みの手口の創意が読みどころなのですが、仲間たちのキャラクターも立っており、とぼけた会話もあって親しみが持てます。
コメディとしてはドタバタだけでなく、同じシチュエーションの繰り返しを使ったり、いい加減に仕事に嫌気が差し始めているドートマンダーと気楽な他の仲間たちとの落差であったりで、当人たちからすれば笑いどころではないのだが、外から見ると・・・・・・という感じですね。苦虫を噛み潰したような顔で繰り出されるところが、何とも好み。

省略がうまく効かされた展開といい、ちょっとしたプロットの捻りといい、職人的語り口のうまさも印象的です。
軽量級ですが、実にいい気分で読めるの作品ですな。子供の頃よく見ていた、アメリカ製の連続TVドラマを思い出しました。

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