2015-04-21

ロバート・L・フィッシュ「シュロック・ホームズの冒険」


ハヤカワ文庫の復刊フェアの一冊。楢喜八のカバー絵が嬉しい。
タイトル通りシャーロック・ホームズのパスティーシュ、その短編集なわけだが。軽い読み物のつもりで一作目の「アスコット・タイ事件」に取り掛かったら、いきなりわけがわからなかった。巻末の解説を読んでようやく趣向を理解した次第。しかし、後半の競馬に関する部分の翻訳はさっぱり。「タイ」は「同着」ということだろうな。そうでないと意味がつながらないので。

ホームズの見当違いな推理と、その裏で人知れず進行する犯罪というプロットの輻輳。日本の現代本格にも通ずるコンセプトであり、しかもそれが凄くすっきりとした形で収まっている。表と裏の物語の絡み方もまた、いくつかパターンがあって、工夫を感じさせてくれます。特に、前半の方に並んでいる数作は意外性も凝らしてあって、かなりな出来栄え。ついでに言うと、こちらのホームズの依頼人にはあまりカタギとは思えない商売の人間が多いというのも可笑しいな。
しかし、後の方の作品になると作り込みが緩い、というか先が読めるものが多くなってきています。また、作品構造の大枠はだいたいどれも同じなので、いくつか続けて読んでしまうと飽きてしまうかも。こういうのは一編ずつちびちび読んでいくのが吉ですな。

勿論、純粋にパスティーシュとしても良く出来ていて。そこここにドイルの原典を思わせる記述が潜んでいるのが愉しいところ。ただ、僕にとってのホームズ譚の魅力はヴィクトリア朝の生活感によるところも大きいのだが、この作品ではそういう楽しみは薄いのね。まあ、それは多くを求めすぎなのだろうけど。
フィッシュに関しては他のも読んでみたいな。

0 件のコメント:

コメントを投稿