基本的にこの作者の小説はとりあえず出たら買って読むことにしているので、内容の方は確認していなかったのだが。ページ数のわりに値段が高いね。
それはともかく、本作はミステリでおなじみの〈読者への挑戦〉を99種類の文体でもって提示する、というもの。そのスタイルは先行作品の文体模写から、一般的に日常生活の中で目にする文章のパロディまで。
帯裏には「さて、この面白さがどこまでわかるかね」という挑発的なフレーズが書かれていますが、決してわけのわからない作品ではありません。ただ、ミステリファンでないとわからないアイディアは満載されているけれど、その面白さは必ずしもミステリ的なものとは限らないので、読者を選ぶ作品ではあるかも。
実際、やっていることは懐かしさすら感じるようなものだと思う。しかし、何を器としてチョイスするか、そしてそこに何を盛り込むか、が実に楽しい。「次はこうきたか!」という驚きや、あるいは巻末の参考文献を見て「なるほど、これだったのか」というものも。
内容のほうも〈読者への挑戦〉をはじめとするミステリについての考察や、ミステリ風コントをして読めるものが散りばめられていて、一筋縄ではいかない。
中でも瀬戸川猛資のスタイルで語られる「42 挑戦状アレルギーの弁」はエドマンド・クリスピンを取り上げながら、まさに本家ばりのミステリエッセイとして面白く読めるものになっています。
きっと楽しんで書いたのではないか、そんな稚気を感じました。なんだか筒井康隆っぽくて、好きだな。