中国をモデルにした架空の王朝を舞台にした連作ミステリ。過去に起こった事件を書き記した書、という設定の4つの短編を、作中現実のパートが物語の初めと終わりで挟む、という構成になっています。
個々の短編は非常によく出来ています。不可思議で魅力的な謎と、それにしっかり応えるだけの大きな真相が用意されていて、ミステリとしてのスケールがでかい。新たなトリックメーカーあらわる、という感じですよ。
更には、それらを包む異世界の構築が素晴らしいし、物語も線が太くて読ませます。
と、言うことないんだけれど、謎が物語によく融けこんでいる分、せっかくの奇想の印象が薄いものになっている、という気も個人的にはする、贅沢なはなしだけれど。
というかミステリ読んでる気がしないのね。ファンタジーみたい。むろん良く出来た、ね。
そうした迫力ある短編部分に対して、外枠の物語の方は随分さらっとしたもの。会話文もラノベみたいで軽いし、全ての短編に巡らされた趣向が明らかにされるんだけれど、ふ~ん、そうなるんだという感じ。
これは意図して重厚さを避けてのものだろうし、好きずきなのかな。正統的なミステリとして最後はまとめた、という印象を受けました。
まあ、力作っすね。エンターテイメントとして密度が高い。
作者は寡作なひとのようでありますが、次も読みたいです。
特に物凄いトリックがひとつある、のだが、この本の帯に書かれた推薦文が微妙にヒントになっている。というか、それで見当付いちまった。損したよ・・・これが無きゃかなり印象違っただろうに(よく本質を捉えた文ではあるのだけれど)。
0 件のコメント:
コメントを投稿