2011-07-29
The Sunrays / Vintage Rays
夏だ! 海だ! サンレイズだ!
というわけで、ちょっと強引ですがサンレイズの3枚組コンピレーションを。今も商売をやってるのかどうか、Collectablesという再発レーベルから出ていました。Collectablesというのはあまり評判の良い会社ではなく、音はあんまりだしジャケットも汚い上、データーも記載されていないようなブート並みのCDを量産していたところであります。ただ、この「Vintage Rays」というのは例外的にきちんと作られたもので、テープリサーチもなされ、マスタリングはサンレイズのメンバーが立会いの元で行ない、制作されたのが1996年ということを考えればまずまずの音。ブックレットも詳細なつくりになっております。サンレイズの音源としては取りあえずこれで全部揃うということです。
ディスク1は1961~64年にレネゲイズ他の名義でさまざまな小レーベルに残した曲を未発表も含めて収録。
この時期は基本的にはサーフバンドだったのかな。サックス入りのインストなどもありますが、元気のいいロックンロールが中心。
なかなか格好いい曲も多いのだが、いかんせん音質が良くないです。だから、繰り返して聴く気にはなれないのだなあ、惜しい。現在のマスタリング技術ならもう少しましに出来て、サーフ/ガレージファンにも勧められるものになるのではと思うけれど、まあマニア向けか。
レネゲイズのメンバーはビーチ・ボーイズのカール・ウィルソンと親交があったようで、その伝でもってウィルソン三兄弟の父親マレーと出会い、サンレイズというポップグループに生まれ変わります。
ディスク2にはサンレイズがタワーという、これもあまり大きくないレーベルに残した音源を収録。唯一のアルバム「Andrea」にシングルのみで出たもの、そして未発表のトラックなど全27曲。
当初のサンレイズの音楽スタイルは、乱暴に言うと初期ビーチ・ボーイズの線を狙ったもの。メンバーのコメントによれば相当にマレー・ウィルソン の指導が入っていたようであります。事実、最初に出されたシングルは両面ともマレーの書いた曲で、はっきり言えば劣化版ビーチ・ボーイズ、ちょっとセンスが古い。
ただ、それ以降にリリースされたメンバーによるオリジナルはいい曲が多いです。2枚目のシングル "I Live For The Sun" はサーフクラシックと言っていい出来栄え。続く "Andrea" も負けず劣らずの内容で、更に'65年暮れにリリースされた同名アルバムの収録曲もちゃんと聴けば、彼らが自分たち自身のスタイルをちゃんと育んでいたことがわかります。ビーチ・ボーイズと比較してしまうとどうしても劣る部分というのが目に付きますが、サンレイズの良さはもっとコンテンポラリーなポップスに近いテイストにあると思います。また、落ち着いた曲調のものではマーク・エリックの「A Midsummer's Day Dream」に共通する洗練されたセンスを感じますが、こちらの方が4年も早いですぜ。
タワーがあまりプロモーションをしてくれなかった分、マレー自身がいろいろとプレゼントを詰め込んだ鞄を携えて各地のDJの元を巡っていたようで。そういう地域ではそこそこのヒットも生まれていたようではありますが、それも続かず。そろそろサーフ/ホットロッドが流行した時期も終わっていたろうし。マレーの関与は徐々に緩くなり、サンレイズは比較的自由にレコーディングが出来るようになっては行くものの、セールスの低さはいかんともしがたく'67年暮れには解散。
ディスク3はデモ・トラックが中心。かっちりと作りこまれていない分、ビーチ・ボーイズ的な要素は更に薄くなっているのですが、楽曲はちょっと驚くほど良く出来ていて。LAポップの知られざる遺産、という感じですよ。
この3枚組は今ではちょっと手に入れにくいですが、ディスク2だけ単独タイトルとしてリリースもされていて、まだ購入できるのでは。
なお、サンレイズのリック・ヘンは1969年に "Soulful Old Man Sunshine" という曲をブライアン・ウィルソンと競作していて。僕にとってはビーチ・ボーイズの曲でも、特に好きなもののひとつなのだな。
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