2016-01-10

倉阪鬼一郎「桜と富士と星の迷宮」


毎年、夏になると講談社ノベルスから倉阪鬼一郎のバカミスが出ていました。しかし、去年の夏は無かったので、もう打ち止めかな、と油断していたのですが。

このシリーズ(といっていいのか)に関してはプロットを説明する意味があまり無いですな。前半で不可能犯罪が次々に起こり、後半は延々と謎解きが続くという。
物語に埋め込まれた秘密は、今までの作品を読んでいればなんとなく見当が付くかも。一方で、小説の外枠にはしっかりミスリード(レベル、ゲームなど)が仕掛けられているのも見逃せない。
いずれにしても、バレようが何だろうがしれっとした顔をしてミステリを続けていくというのがいかにも可笑しいな。

個々の事件を見ていくと、世界の秘密との絡みが非常に密接に作られています。全てが一つながりに解けていくものですが、それが逆にあっさりと感じられてしまう面も。
あと、ある登場人物の口を通してミステリとホラーの融合が宣言されます。付けたしとしてのホラーではない、とも。
なるほどねえ。でも、どちらかといえばこれはSFのような鬼がするのだけれど。

相変わらず緻密に構成された作品でありました。しかし、ある程度イメージする力を必要とするものであり、プロットを追うだけの読み方では楽しめないでしょう。
ミステリしか読まないひとや、単純に驚きを求めるような向きにはあまり受けないかもなあ。

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