1938年に発表された、パーシヴァル・ワイルドのミステリ第一長編。ワイルドは1910年代から作家として活動していて、長編デビュー作とはいえ既に十分なキャリアは積んでいたことになります。
ウインター・スポーツを売り物にしたホテル、そこで事件は起きます。大雪によって交通が遮断、電話も不通となってしまう。古典的なクローズド・サークルですが、そのいきさつが登場人物四人の手記によって、リレー小説のかたちで語られていきます。
作家を自称するあからさまに胡散臭い男が出てくるし、不可解としか言いようのない現象も繰り返される。テンポよく軽快な語りに乗せられ、物語が進むにつれて謎のほうも増えていくのだから嬉しくなってくる。
そういったように道具立ては黄金時代を思わせるミステリなのだけれど、解決編はパズルの妙味よりもトリッキーな意外性とユーモアが先に立つようなもの。伏線過多のところがあってごたつきますが、勢いで乗り切ってしまえているかな。
『検視審問』シリーズの作者としての期待を裏切らない、凝りに凝った楽しい作品でした。
ところで、この「ミステリ・ウィークエンド」という長編は200ページ足らずしかありません。本書にはその埋め合わせに短編3作が併録されています。その中では「自由へ至る道」が良いか。クライム・ストーリーとして始まりながら全然違った方向へと展開していく、奇妙な誇りの物語です。
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