2016-01-24
エラリー・クイーン「熱く冷たいアリバイ」
ご近所さんが集まってのバーベキュー、その席上である若い夫婦の間にちょっとしたいさかいが起こる。翌日、妻の方が刺殺体で発見され、別の場所で夫は薬物が原因で亡くなっていることが判明した。夫が妻を殺した後で自殺した事件、そのように見えたが、担当のマスターズ警部補は現場の状況から工作の気配を嗅ぎ取った。
〈エラリー・クイーン外典コレクション〉、その第三作です。発表は1964年、代作者はフレッチャー・フローラという、あまり聞いたことのないひとなのですが、物語は非常にテンポ良く展開していくし、キャラクターの書き分けもいい。だれ場もなく大変読みやすいのだが、あまり印象的な場面や個性といったものもないか。
ミステリとしては手堅い謎解きが楽しめます。マスターズ警部補が推論に基づいて捜査していくと、それを裏付ける証拠が出てきたり、あるいは別の線を指し示す事実に出くわしたり。試行錯誤がありつつも、結構、都合よく話が進んでいくような印象です。
意外な展開もあるのだけれど、あまりけれんを感じさせない構成・文章なので、さほど盛り上がってこないのが残念。このプロットならもっと面白くなったのでは、という気がしちゃうんですよね。
しっかりと構築されたフーダニットではあって、まあ、ペーパーバックなら十分満足な内容なんだけれど、こちらはハードカバーで買って読んでいるわけであって。ううん。
今回の〈外典コレクション〉、三作ともそんな感じですね。収まりが良すぎるというか。また、よほど熱心なファンでない限り、これらの作品からクイーンのテイストを汲み取るのは難しいと思います。監修者の飯城勇三氏は解説で「ジャック・ヴァンスとリチャード・デミングに関しては、それぞれもう一作くらいは訳す価値があると思っている」と書かれていますが、個人的にはもういいかな。
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