著者、毎年恒例のバカミスです。
内容としては、七色の外観をもつ洋館を舞台にした七連続の不可解殺人、それが90ページほどのところまでで全て起ってしまう。そこから後はすぐに解決編という段取りです。
頭からいかにも不自然な描写が満載で、何か隠してますよ的うさん臭さが半端ない。
過去の作品ではそれなりに小説らしい体裁をつけていたと思うのだけれど、今作に至っては完全に開き直っているという感じだな、シリーズ読者だけを相手にしているのか? と思って読み進めていくと、やがてこれにはちゃんと理由があったということがわかる。
そして、事件の謎が解かれた後、これまでなら延々と作品世界にカタストロフが訪れるのだが、今回はちょっと違う。バカミスとして人間を描く、と言ったらよいか。終盤、テキストの解釈について判断が揺れてしまうところがいい。
更に今作では、現実に対する異議申し立てとしてのミステリの側面も強い。「プロローグ」の位置づけに意味がありそうで、あえて作中世界を閉じきらなかった、と考えることもできるか。また、最後の最後「さらにもう一つのエピローグ」などは、読んでいてちょっとフィリップ・K・ディックを想起しましたよ。
前作を読んだときは、そろそろマンネリかなという気もしたのだけれど、新境地でしょうか。これでまた目が離せなくなった。
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