2013-09-29

笹沢左保「霧に溶ける」


莫大な賞金が懸かったミスコンテスト、その最終予選に残った美女たちを次々と事件が襲った。脅迫、交通事故、ついには変死まで。

1960年作、笹沢左保の第二長編です。
いかにも昭和らしい風俗を背景にして、ミス候補たちのギラギラした欲望が描かれます。また、警察官たちは夏の炎天下の下、汗水垂らしながら地道な捜査を続けるのですが、彼らの前に立ちはだかるのは、それら作品世界と似つかわしくないくらいの不可能興味溢れる謎です。

使われているトリックの数々はいかにも頭でっかちで生硬なもので。それが時代の一周したような今では、かえって新鮮に感じられました。特に密室の謎は、さまざまな可能性を潰した上での盲点を突いていて面白い。
そして全ての殺人トリックが解かれた後も、まだフーダニットの難問が残っているのだから、なんとも密度が濃い。

終盤に明らかになる事件全体の構図は、この作品が書かれた時代を考えるなら非常に先鋭的なもので、平成の本格ミステリとも共通するテイストすら感じました。手掛かりははっきりと出されているので、現代の読者ならば見通すことも可能でしょう。しかし、この悪魔的な犯罪計画と真犯人の安っぽいキャラクターの落差が凄いな。
また、終章になってようやく最後の1ピースが明らかにされ、より大きな絵が浮かんでくる構成も決まっています。

300ページちょっとの物語に大掛かりなトリックをこれでもか、とぶち込んだサーヴィス編。人情劇も盛られているのですが、読後感はちっとも重くならないのが好みでした。

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