2013-09-17

Raspberries / Side 3


ラズベリーズ、1973年リリースのサードアルバム。
これ以前の彼らの作品はエリック・カーメンの個性が突出し、凄く大雑把にいうと、アメリカ的にデフォルメされたポール・マッカートニー、というテイストのものでした(これは模倣したというわけではなく、資質に共通した部分があったことによるものだと思いますが)。それが、このアルバムではサウンドがぐっとハードに変化、感傷的なスロウは一曲もなく、バンドらしさを強調されたものになっているのです。曲の構成はシンプルになり、いかにもビートルズ的なアレンジも影を潜めています。

そして、そのことによって特にパワー・ポップ系の曲における音楽的なまとまりが獲得されました。以前なら例えば、彼らの最大のヒット曲である "Go All The Way" だとイントロはヘヴィでドライヴ感のあるギターリフなのに、唄が始まった途端に甘々のポップスになっているというような(それが個性でもあったわけなのだけれど)曲想の乖離がありましたが、それが今作では解消されています。
とりわけ、2つのシングル曲 "Tonight" と "Ecstasy" におけるキャッチーなハードポップとしての完成度には目を見張るものがあって。"Tonight" の方は楽曲・演奏・歌唱など何を取っても後期スモール・フェイシズそのものだし、"Ecstasy" のメロディはまるっきりマージービートなのだけれど、そのことがちゃんとラズベリーズとしての個性になっているというのが素晴らしい。

一方で、ライヴ感あるバンドサウンドにこだわった結果として、過去のアルバムにおいてはちょっと出来の落ちる楽曲でも多彩なアレンジに救われていたのものが、ここでは曲による出来不出来がはっきりとしてしまっていることは否めません。

そういったように、トータルでの曲の良さでは必ずしもベストとはいえませんが、このアルバム後にメンバーのうち二人が抜けたこともあって、バンドとしてのラズベリーズ、その到達点を示した作品ではありましょう。

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