2015-07-19

ブライアン・オールディス「寄港地のない船」


1958年発表になるオールディスの第一長編、その初訳だそう。

世代間宇宙船ものということなんですが。おそらくかつては高度であったに違いない文明が衰退、宇宙船の中は荒廃が進み、いたるところ植物が鬱蒼としています。人々は狩猟を中心にした素朴な生活を送っていて、彼らにとって宇宙船自体が世界のすべてであり、そもそも自分たちがいるのが船の中であることすら半ば忘れ去られているよう。
若い狩人、コンプレインも原始的な言い伝えに従って生きてきました。だが、トラブルに巻き込まれたことを契機に、自らの部族を離れて危険な旅に出ることになる。


長編デビュー作とはいえ、実在感ある世界の描写と活力あるキャラクターは、すでに大したものですな。
特に、第一部では環境のあり方があたかも心象に対応して変化しているような表現が見られます。ここら辺りは後のニューウェーヴSFにもつながっていそうだ。
そして、他の種族との邂逅などを重ねながら、冒険の旅はいつしか、自分たちの住む世界の根源的な秘密へと迫るものになっていく。同時にコンプレインの自己発見としての物語としてもよくできています。

最後まで放り出されたままの要素は見受けられるけれど、それさえもひとつところには収まらないような世界のありかたを示しているようだ。
また、現在からすればその仕掛けには予想のつく部分がありますが、それでも勢いにまかせて乗り切ってしまえるような力強さを感じました。
やっぱり古典ですね。いいですわ。

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