2015-07-21

アガサ・クリスティー「死者のあやまち」


1956年発表になる長編。クリスティ作品は発表年代順に読んでいるんだけれど、ここのところ低調なのね。しっかり練られたとは思えない、雑なのが多くなっている気がするのだ。じゃあ、本作はどうかというと。

「でも、明日、犯人探しの余興の殺人のかわりに、ほんものの殺人があったとしても、あたしは驚かないわ!」
エルキュール・ポアロは探偵作家のオリヴァ夫人から呼び出され、デヴォンシャーにある屋敷に向かった。彼女は依頼を受けて当地で行われる推理劇の筋をつくったのだが、人々からの口出しによってそれは影響をこうむっているのだという。何かがよくない、自分が操られている、という印象を口にするオリヴァ夫人であったが・・・・・・。


劇中に本物の事件が起こるという、黄金期以来のいかにもミステリらしい設定が扱われています。
ポアロは推理の取っ掛かりらしきものは掴むものの、それらが何を意味するのかが判らない。ひとつの事実を起点に謎が解けていくわけではなく、いくつかの手掛かりが集まってくることで、それらが当てはまる全体図が見えてくるもののよう。

正直、推理そのものは飛躍があるというか、手掛かりが少なすぎると思うのですが。その分、いきなり叩きつけられる真相はなかなか衝撃的。犯人を見抜いていた読者さえ騙してしまえという、このあこぎさがクリスティの味ですな。浮かび上がる伏線も非常に印象的なものであります。
また、被害者即犯人という古典的なトリックも、状況がはっきりするタイミングをずらすことでわかりにくいものにする創意がみられます。

相変わらず犯罪計画には無理が目立ちますし、必要があまり感じられないキャラクターも登場するのですが、それでも持ち直した作品だとは思います。ええ、面白かったですよ。

0 件のコメント:

コメントを投稿