ニューヨークのギタリストにしてアレンジャー、ワルター・ライムが米デッカ傘下にあったMTAというところから1970年に出したボーカル/コーラスアルバム。
間違ってもティーンエイジャーはターゲットではない、おそらくは少し歳を取ったポップスファン向けに制作されたであろう音楽。熱狂を誘うようなものではないが、聴くたびに感心させられる。柔らかな管弦は美しく、レンジの広い男女混成コーラスは奇抜なことは何もしていなくとも見事に絡み合う。また、それらの全体からジャズのセンスがそこはかとなく感じられるのもいい。
演奏のエネルギーが前面に出ることなく、スマートに設計された音像には、洗練とはこういうことなのだろうな、と思わされる。もっとも、それをつまらないと感じるひともいるだろうけれど。
楽曲は粒揃いだが、中でもマーゴ・ガーヤン作の "Something's Wrong With The Morning"、あるいはタイトルから何からまるっきりバカラック・マナーの "I’ll Never Fall In Love Again" が抜群。
そして、極めつけはロジャー・ニコルズを思わせるメロディの "A Woman Looking For Love" という曲。ずっと、もう少しリズムが強調されていれば、せめてドラムが中央に定位していれば、と思っていたのだが。ポップスとしてのキャッチーさよりもディテイルの優美さを取ったのだろう。最近になってようやく、そんな選択も有りだな、という気がしてきた。
0 件のコメント:
コメントを投稿