2014-08-11

倉阪鬼一郎「波上館の犯罪」


毎年、この時期に講談社ノベルズから出る倉阪鬼一郎の作品はいわゆるバカミスなのだが、今回のは違う、と作者の言葉にあります。

作品冒頭では、わたしは犯人で探偵にして被害者、さらには記述者だという宣言がなされていて、なにやら懐かしの新本格っぽい。
内容としては孤島の館を舞台にした連続殺人であり、それぞれに使われるトリックはこれまでのバカミス作品と共通するテイストのもの。

ただ今作では、作品全体にわたる趣向については、最初の数ページに目を通せば容易に気付くことができるだろう。そもそも読者から隠そうとさえしていないこれは、プロットに寄与するものというより、むしろ視覚的・美的効果を狙ったもののように思えるのだ。
また、じっくりとした心理の書き込みや、事実と比喩の区別がはっきりしない描写などは、ある種のフランスミステリを強く意識させるものだ。冒頭における宣言も、その視点からの方がすんなりと収まるのでは。

想像するだにおそろしい労力によって、内容と形式の合致が非常に高いレベルで達成された美しいミステリだとは思います。ただ、それが面白さになっているのか、というと困るのだが。

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