2014-08-17

Spring / Spring (eponymous title)


1988年に作られた古いCDなので、久しぶりに聴いてちょっと「音圧低いなあ、しょぼくない?」と思ったんだけれど。ボリュームを少し上げてみると、これはちゃんとしたマスタリングであることが判り、流石はビル・イングロットだわ、と感心しました。

スプリングの唯一のアルバム「Spring」は1972年リリース。アレンジャー及びプロデューサーのひとりとしてブライアン・ウィルソンの名がクレジットされていますが、ブライアンは気の向いたときにスタジオに現れてはちょこちょこっと参加するといった具合で、実際にはレコーディング全体のせいぜい4分の1ほどにしか関わっていないという話です。

いくつかのビーチ・ボーイズ用に作られたトラックを流用したような曲を除くと、非常にサウンドはシンプルで。基本的な4リズムにシンセで装飾を加えてあるくらい。だからといってチープな感じはしないのね。豊かなコーラスのおかげもありますが、いや、エンジニアリングとかミックスって大事ですな。
サンシャインポップをベースにしながら、ナチュラルで穏やかな感触に仕上がったアルバムといえましょうか。

収録曲は殆どカバーですが、元々の曲の良さを生かしつつアイディアをプラスしたという印象で、大きく外したものはありません。
中でも目を引くのは "Thinkin' 'Bout You Baby"。1964年に、ブライアン・ウィルソンがシャロン・マリーのために作った曲で、ビーチ・ボーイズの "Darlin'" の元歌でもあります。シャロン・マリーのオリジナルはフィル・スペクターの影響を感じさせる力強いサウンドであったけれど、ここではテンポを少し落としたメロウな仕上がり。コーラスも麗しく、メロディの良さがより伝わってくる。
また、シティの "Now That Everything's Been Said" はキラキラした味付けがガール・ポップらしい楽しさを盛り上げる。シティのオリジナルも好きなんだけれど、こちらも甲乙つけ難い出来。
ビーチ・ボーイズで演ってる曲もいくつかあって、特に "Good Time" は後のアルバム「Love You」で聴けるものよりも凝ったアレンジが楽しい。
個人的なベストは、というとCDのボーナストラックになっちゃいますが。1973年にシングルで出されたオリジナル曲、"Shyin' Away" が切ないメロディと木管を効かせた柔らかなアレンジで素晴らしいな。


なお、このCDに収録された以外でも、彼女たちが'70年代後半に制作した未発表曲があって。それらはキャピトルが編纂したハニーズのコンピレーションに収められていますが、コンテンポラリーなサウンドを意識したもので、正直あまり面白くない出来。
未CD化なのですが、ファン向けのみで出された "Snowflakes" という曲があって、むしろそちらの方がいいですね。検索すれば容易に聴くことができると思います。

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