アートウッズの三枚組、ほぼ全曲集。公式発表された全音源に加え、これまで盤のかたちにはなっていなかったBBCセッション、およびバンド末期におけるライヴまで入っています。ライナーノーツ(これもすごく分量がある)を読むと、他にも録音されながらもレコード会社がお蔵入りにした曲や、音質が悪いので収録を断念したライヴも存在するそうですが。
ディスク1は「ACETATES, SINGLES & EP TRACKS」。アルバム「Art Gallery」以外のスタジオ録音がまとめられています。
改めて聴いてみると、EP「Jazz In Jeans」からの4曲はやや異色ですな。タイトルどおりジャジーで、マンフレッド・マンにも共通するようなクールな仕上がり。いや、凄く格好いいんだけれど。
前身にあたるアート・ウッド・コンボも4曲収められており、うち2曲がこれまで未発表のもの。オルガンが牽引するオーソドックスなR&Bですね。
また、このディスクの終わりのほうには1965、66年のBBCセッションから6曲。彼らの演奏能力がよりダイレクトに伝わってきます。スタジオ録音を残していない曲としてはレイ・チャールズの "Smack Dab In The Middle" とルーファス・トーマスの "Jump Back" が取り上げられており、特に前者はドラムが迫力たっぷりに捉えられていて、いいな。
ディスク2は「ART GALLERY」。同名アルバムのステレオミックスに加え1966、67年に行われたBBCセッション3回分が収められています。
特に、最後のBBCセッションではオーティス・レディング・ヴァージョンの "Day Tripper" にビリー・プレストンの "Steady Gettin' It"、ミッチ・ライダー&ザ・デトロイト・ウィールズの "Devil With A Blue Dress On/Good Golly Miss Molly" なんかを演っていて楽しい。ただ、このときのセッションだけ若干音質が落ちるのが残念(それでも十分に聴けますが)。
ディスク3は「LIVE AT FUNNY PARK, DENMARK, 1967」。デンマークでのライヴ、12曲入り。
この頃にはドラムのキーフ・ハートリーはクビになっていたそうなのだけれど、そんなことは問題にならない熱演です。特にジョン・ロードのオルガンが弾きまくり。サム・クックの "Shake" では "Work Song" のメロディを挟んだりしていて、格好いい。一方、ヘビーな曲ではもうR&Bコンボの枠には収まらない感が強いな。
ただし、音質はブートレグ並であって、おそらくオーディエンス録音でしょうね。ボーカルがやや遠めなので、ちょっと他人には推奨しにくいな。
レアかどうかの判断は全くつかないが、とりあえず写真も満載です |
いいんだけれど、あまり突出した個性や華が感じられないんですね、やっぱり。アート・ウッドという不器用なシンガーは、このバンドのハートであると同時に限界でもあったのかな、という気はします。
個人的には生き生きした表情が感じられるBBC音源でだけでも価値あるセットだと思いますが。
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