2015-08-15

アガサ・クリスティー「パディントン発4時50分」


ロンドンで買い物をした帰り、ミセス・マギリカディは列車の中で居眠りをしていた。ふと、目を覚ますと並走する列車があり、その中では今まさに殺人が行われていたのだ。マギリカディは自分の目撃したものを、友人であるミス・マープルに話すのだが・・・・・・。


1957年発表作。『予告殺人』にも出ていたクラドック警部が登場。『牧師館の殺人』のグリゼルダもちょこっと顔を出す。
導入部分が非常に魅力的であって、ここから「誰も自分が殺人を見たことを信じてくれない」式のスリラーにも仕立て上げられそうだ。

それはともかく。マープルものの初期短編に、甥で作家のレイモンドという若者が出てきました。それが、この『パディントン発4時50分』ではレイモンドの次男が英国鉄道に勤めていると書かれていて。いや、時間の流れを感じさせます。
実際、マープルがもはや年老いて自分ではそれほど動きまわれないことが強調されていまして、実地調査にはルーシーという女性を雇うことに。ルーシーは死体の痕跡を探すべく、線路脇の敷地を所有するクラッケンソープ家にお手伝いとして潜入。
プロットはしっかりしているし、キャラクターも面白く、興味を切らさないまま読んでいけます。フーダニットとしての謎とともに、殺されたのは誰だったのかが不明なまま物語は終盤へ。

犯人が判明する場面はとても印象的ですし、真相もそこそこ奥行きのあるもの。なのだが、推理の手掛かりがあまりにない。マープルものはもともとそういう傾向があるけれど、この作品はちょっと極端。

ミステリとしてはちょっと詰めが甘いところが残りますが、面白く読めたのは確か。

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