2015-08-14

ジャック・カーリイ「髑髏の檻」


インターネットの宝探しサイトに現れた奇妙な記号、それは異様な暴行を受けた死体を示していた。猟奇犯罪を扱う部署に属するカーソン・ライダー刑事は、休暇先の地であるにもかかわらず、連続殺人事件に巻き込まれていく。


米本国では2010年に出た、シリーズ7作目です。6作目は事情あってか翻訳がスキップされています。本国ではほぼ年一冊ペースで刊行されているのに対して、邦訳が出るのは2年に一回くらいなので、今後もこういう風なことはあるかもね。

それはともかく、相変わらずうまいし、面白い。サイコサスペンス的な重さ・暗さはほどほどに、適度なユーモアを交えた語りが快調です。大小のツイストにドライヴさせられて、一切だれることもなく物語は進む。400ページに満たない、というサイズも好みであって。細部はしっかりしているけれど、プロット上では大きく省略が効かせられているのだな。
今回は相棒であるハリー・ノーチラスの出番が少ないが残念ですが、その分ジェレミー兄さんが大活躍しています。登場シーンが実に見事ですな。しかし、ジェレミーってハンニバル・レクターなんだろうけど、麻耶雄嵩作品の探偵みたいでもあるな。

「これは」僕はその絵を指さして言った。「ホイッパーウィルヨタカですね?」
カーソンが老嬢が紙に描いた鳥の名を当ててみせるシーン。彼にもまた、他人の精神に同調する能力が潜んでいるようであるよね。

ミステリとしては捜査小説としての要素がこれまでで一番強いのではないかな。異常な論理がベースになっていることもあって、読者にとっての推理の余地はあまり無いのですが、浮かび上がってくる予想外な構図や伏線の数々はさすが。
ただ、展開が読めない分、物語の焦点がいまひとつはっきりしない気がするんだよなあ。シリーズのファンならきっと楽しめるとは思いますが、ベストの出来では無いと思う。
あと、邦題の付け方は難しいね。

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