2015-08-23

Carl Hall / You Don't Know Nothing About Love


カール・ホールはハイテナーのシンガーであり、その歌声はときに女性と聞きまがう程。しかしながらゴスペル仕込みのディープさと、抜群の切れ味も併せ持つ。
このコンピレーションは彼が1967年から72年に残した録音集で、3枚のシングルと13の未発表トラックが収録されている。プロデュースは全てジェリー・ラガヴォイだ。

シングル曲のうちではタイトルにもなっている、1967年に出された "You Don't Know Nothing About Love" というスロウが絶品。乾いたスネアに太く重いベース、リードとリズムの間を自在に動くギター。そしてボーカルは感情の高まりを感じさせながらも絶妙にコントロール、緊張感を湛えて間然とすることがない。これを聴けば、このシンガーは誰なんだ、もっと他のもないのか、という気になってしまってもおかしくない。
また、そのB面であった "Mean It Baby" という一転してポップなミディアムも、軽やかさの中に哀愁漂う出来で好みであります。
その後の2枚のシングルではファンキーな傾向が強まっていて、演奏にあおられるように非常にテンションの高いボーカルが聴けますが、ときに余裕が無いように感じられてしまう瞬間もあるかな。

未発表のものもそこそこいいのが揃っていて。'67年の "Just Like I Told You" はけれん味のないノーザンで気持ちがいいし、"Dance Dance Dance" と "What Kind Of Fool Am I?" はピアノだけをバックにしたシンプルなデモですが、余計な力みがなく伸びやかな歌唱を楽しめる。
'71年に録音された曲では、"Sometime I Do" がスワンプ・ロックに近いようなミディアムで、なかなか格好いい。もっとしっかり仕上げられていれば良かったのに、とは思うが。ゴスペル・ポップという趣の "It's Been Such A Long Way Home" も悪くない。

ジェリー・ラガヴォイの音作りはディープ・ソウルにこだわることなく、ポップな目配りも感じさせるもので、かえって気合の入ったボーカルが際立つ仕上がり。ただ、個人的にはもっとオーソドックスなソウル・バラードをたくさん聴いてみたかった、という気はします。

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